友田明美「親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる」
以前、福井大学教授・友田明美さんのマルトリートメント(=不適切な養育)に関する本をご紹介しました。
今回ご紹介する本は、研究結果や実際のケースを例に、子どもの問題を改善するためには、親の治療も重要であることを説いた本です。
以前ご紹介した本には、マルトリートメントによる脳の変形や影響・対処法が詳しく書かれていました。しかし本書では、友田さんの研究室での研究結果や診療内容・自治体との取り組みなど、より専門的で具体的な内容となっています。
仕事上、子どもの発達や子育て支援・教育に関わる方は、一度読んでおくと良い本だと感じました。
著者の紹介
経歴を引用します。
友田明美(ともだ・あけみ)
小児精神科医。医学博士。 福井大学子どものこころの発達研究センター教授。 熊本大学医学部医学科修了。 同大学大学院小児発達学分野准教授を経て、2011年6月より現職。 福井大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長兼任。 2009‐2011年および2017‐2019年に日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表を務める。 著書に『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版新書)、『新版 いやされない傷』(診断と治療社)、共著に『虐待が脳を変える──脳科学者からのメッセージ』(新曜社)などがある。
引用元:友田明美(2019)『親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる』NHK出版.p. 1841.
本の紹介
本書では、友田さんが子どもの診療に当たる中で、「親の脳とこころに健やかさを取り戻す」重要性を認識し、どのような研究や治療を進めているかが書かれています。
第1章ではストレスによる子どもの脳への影響と症状、
第2章では「虐待の世代間連鎖」のメカニズムの説明、
第3章では虐待の世代間連鎖を断ち切る方策や治療法、
第4章では親への支援のために友田さんの研究室が取り組んでいる活動や研究の紹介、
最後には、児童青年精神医学を専門とされる杉山登志郎先生との「親子並行治療」の対談が収録されています。
以前ご紹介した『実は危ない! その育児が子どもの脳を変形させる ほめ育てで脳は伸びる』より専門的な内容になるため少し難しくはなりますが、研究や治療について噛み砕いて書かれています。
おわりに
友田さんが度々主張される、「子育ては一人でできるものではない。周りに頼りながら、みんなで子育てをしていけばよい。そのための社会の仕組み作りが必要である」という言葉。本当にその通りだと思いました。
核家族化が進んだことで、各家庭が自由にできる反面、子育ての様子がその中でしか分からないという傾向があります。
また、本書にもあるように、言葉にすると簡単に受け取られてしまう子育て中の悩み事(子どもが言うことを聞かない、昼寝をしない、家事をする間がないなど…)に日々接する親が、どのくらいストレスを感じているのかを客観的な数字で示す手段と機会が身近にあれば、パートナーや支援団体を含めた周囲が、より手を差し伸べやすくなることが期待できます。なるべく早く、定期的な健康診断の際などに取り入れられるようになれば良いなぁと思います。
子どもの発達や子育て支援・教育に関わる方は、一度読んでみてはいかがでしょうか。