黒川伊保子「家族のトリセツ」
黒川さんすみません。これまでの「夫のトリセツ」、「妻のトリセツ」、「息子のトリセツ」、「娘のトリセツ」の単なる総体だと思っていました…。なめてました。
そういった面もあるものの、この本に書かれているのは、家族ーひいては自分の甘やかし方。そして、それぞれの長所の生かし方。この考え方を採り入れることで、確かに家族が寄り添い、最強のチームが作れるに違いありません。
私はこれまで、「世の中の人がよく言うように、夫が家事育児に気付かない/手伝わないことは諦めないといけないのかなぁ…。せっかく結婚までしたのに、最後にすることが諦めなんて、この先一緒にいる意味があるんだろうか…」と考えていた時期がありました(ごめんね)。
私の考える人生のパートナーとは、互いに欠点があっても補い合い、主体的に協力し合える関係なのです。
でも、私が気付かない/手伝わないと思っていたその癖が、個人の欠点というより脳自体の全般的な性質なのであれば、(そして女性脳の被害妄想なのであれば、)それは個人の怠慢とは言えないのだから、対策を講じたり関係を好転させることができるのだと、一連の「家族のトリセツ」シリーズを読んで分かりました。
また、欠点の裏を返せば長所にもなり得ること、欠点を直せばその長所が減ってしまうこと。私はここを見逃してしまいがちで、黒川さんの著書を読んでようやく納得できました。
「家族を甘やかす」、これが今回の本のメインテーマであり、これから家族とうまく付き合っていくためのコツになります。
著者の紹介
人工知能を専門領域とされ、人工知能の開発過程で対話の文脈に男女の違いがあることを発見。男女で「とっさに使う脳神経回路」の初期設定に大きな違いがあることをつきとめ、それに基づく人間理解を伝えるため、執筆を始められたそうです。
これまでに、「妻のトリセツ」「夫のトリセツ」「娘のトリセツ」「息子のトリセツ」「人間のトリセツ ~人工知能への手紙」などを出版されています。
黒川さんの、これまでの知見に基づきつつ、実体験や人への深い愛情を持って語られる言葉には、強い説得力があります。
本の紹介
第一章冒頭部にある、
私たちは、昔のように、のほほんとしていられない。 マスコミは次々に「情報」を垂れ流し、SNSが狂ったように「情報」を拡散する。 かくして、「いい」と言われたことに邁進し、「悪い」と言われたことを、徹底的に忌避する人が増えた。誰よりも充足したいから。
引用元:黒川伊保子(2020)『家族のトリセツ』NHK出版.p. 97.
…この一文は非常に同感できますね(^^;)
私自身はアドラー心理学やその他の方の著作を読んだりしたことで脱したものの、これまでいかに他者の評価軸で生きていたことか…。また、いつ嵌ってしまうことか…。
こういった世間の評価を気にして完璧を目指すのではなく、「ひとりで完璧を目指さずに、尖りと凹みが違う脳の持ち主同士が手を携えて、チーム全体で『ふっくら大きなレーダーチャート』を作ればいい。その最小単位が家族なのだと思う。」これこそが、本書の主題です。
そしてそれぞれの長所を伸ばすためには、黒川さんもおっしゃるように日々の失敗と経験が大切です。
失敗をすることで、脳がその箇所に神経信号を流れにくくさせるそうです。
私もこの年でようやく失敗の重要性を認識したところですが、子供と一緒にやらかしながら日々を過ごしていきたいと思えました。
おわりに
これまで単発的に覚えていた、子供や夫/家族への声かけスキル。
「家族とは、凸凹を重ね合わせて、大きくきれいな円を描く、人生のチームである。」
料理が得意な人もいれば、手先の器用な人がいても良い。自分の家事タスクを忠実に守る人もいれば、器用に立ち回れる人がいても良い。裏を返せば、誰かの得意が誰かの苦手なのかもしれない。
家族というのは、そういう長所や短所を補い合い、日々を充足させる安寧の場所であったら良い。
愛し上手な黒川さんの、慈しめる理解力と声かけの工夫を手に入れたら、家族はもっと強くなれる。
これまで黒川さんの本を読んできた私の、家族への心も声かけも実際に変わりました。ママが変わると家族も変わる。家族の中心にいる人の影響って思った以上に大きいのかも。
まずは本書「家族のトリセツ」からでも、黒川さんの人を愛するためのアイディアにあふれた著書を、是非手に取ってみてください。
単なる技術だけでない、脳科学や人間理解に基づいた声かけは、続きやすく心から発せられやすいものだと実感しますよ(*^^*)